自己破産の相談に必要となる情報
1 必要となる情報の要素
自己破産の申立には様々な情報が必要になりますが、弁護士との最初の相談で全てを伝えるのは無理があります。
そこで、最初の相談では、本当に自己破産でいいのか、それとも他の方法をすべきかを決めることが重要になります。
自己破産でいいのかどうかを決めるにあたって、分かっているとよい情報としては次のようなものがあります。
詳細は、続けてご説明します。
- ①借金についての情報
- ・借入先
- ・借入額
- ・借入時期
- ・返済状況
- ②財産についての情報
- ・自宅、車の有無、価格
- ・加入している保険の内容
- ・預金額
- ③生活状況についての情報
- ・家族構成
- ・世帯全体での収入、出費
- ④事業を営んでいるか
- ⑤借金をするまでの経緯
2 借金についての情報
⑴ 借入先
借入先として知り合いや勤務先がいる場合、自己破産をすると知り合いや勤務先への支払いも全て禁止されます。
そのため、自己破産をする前に、知人や勤務先に「借金の返済ができなくなるけど大丈夫か」を確認する必要があります。
また、勤務先などに自己破産することがバレたらクビになるというような場合には、そもそも自己破産をするかどうかを考え直さなければいけません。
また、税金など一部の債務は、自己破産をしても免責されずなくなりません。
そのため、生活が苦しい理由のうち税金の未払いが大きな割合を占める場合、そもそも自己破産では解決しない可能性があるため、別の方針を考えなければいけません。
⑵ 借入額
借入額が大きい場合は、管財事件となる可能性が高くなります。
管財事件になると、同時廃止事件と異なり、追加で最低20万円の予納金を裁判所に納めなければなりません。
そのため、資金繰りを考える必要があり、今後のスケジュールも大きく変わってきます。
⑶ 借入時期
自己破産では、借金をした理由を詳細に裁判所に報告します。
報告にあたり、同じ300万の借金でも、10年間かけて300万円の借金になったのか、1年間で300万円の借金になったのかでは、報告内容も大きく変わる上、審査の厳しさも段違いです。
もちろん、この例の場合には、1年間で借金が300万円になったという方が審査は厳しくなります。
そのため、借入してから自己破産するまでの期間が重要になってきます。
また、借入開始が25年以上前の場合は、過払い金があるかもしれません。
自己破産をすると、過払い金は全て回収されてしまいます。
そもそも、過払い金の金額によっては自己破産をしなくて済むかもしれません。
⑷ 返済状況
借入をしてから一度も返済をしていない場合は、免責となるか否か(借金の返済義務がなくなるかどうか)の審査が厳しくなったり、債権者から異議が出る可能性があったりします。
無事に自己破産できるかの結論に影響がある部分なので、重要性が高いです。
あまり返済をしておらず、借り入れてすぐの場合は、自己破産を避ける選択もありえます。
3 財産についての情報
⑴ 自宅、車の有無
自己破産では、価格が20万円を超える財産は売却して返済に当てることになります。
自宅が持ち家の場合や、車を手元に残したい場合は個人再生など別の手段を考える必要があります。
⑵加入している保険の内容
生命保険や学資保険などの中には、解約をすると解約返戻金が払い戻されるものがあります。
そのため、保険契約も財産として扱われており、場合によっては保険契約を解約しなければいけません。
また、解約返戻金が20万円を超える場合は、管財事件となるため、予納金を追加で最低20万円用意する必要がでてきます。
⑶ 預金額
預金口座についても、20万円を超える場合は解約をする可能性がでてきます。
また、管財事件となるため、予納金の用意などの資金繰りを考えなければいけません。
4 生活状況についての情報
⑴ 家族構成
自己破産の手続きでは、家計簿を作成して裁判所に提出する必要があります。
家計簿は同居の家族の収入と出費をまとめる必要があるため、家族の協力は不可欠です。
家族の協力が得られるかは、弁護士としても早期に確認をしたいため、家族構成は重要な要素です。
⑵ 世帯全体での収入、出費
自己破産では、借金をなくして生活の再建を目的としています。
例えば、夫の収入が25万円、妻の収入が10万円のところ、出費が40万円だと毎月5万円の赤字です。
このような場合は、借金をなくしてもすぐに生活が成り立たなくなるため、生活再建ができないということで、生活の改善をしないと自己破産が認められません。
弁護士としては収支を確認したうえで、生活指導を行う必要があります。
5 事業を営んでいるか
破産をされる人の中には、法人を作り会社として事業を経営している場合や、個人事業主として事業をしている場合があります。
会社経営者の場合は、個人の自己破産だけでなく、会社の破産手続きを同時に行わなければいけないことも多いです。
会社の破産を行うとなると、従業員の解雇、事業所の賃貸の引渡し、取引先との調整などやることが多くあるうえ、費用も大きく変わってきます。
また、個人事業主の場合は、管財事件となるため、最低20万円の予納金の用意を考えなければいけないうえ、裁判所に報告するための資料もかなり細かくなります。
6 借金をするまでの経緯
浪費やギャンブルを理由に借入をした場合は、免責不許可事由にあたり免責にならない、つまり借金がなくならない可能性があります。
免責不許可事由に当たるとしても、裁量免責といって、裁判官の裁量で免責となり、借金がなくなる場合はあります。
もっとも、免責不許可事由が疑われる場合は管財事件となり、管財人による免責調査が行われるため、予納金の資金繰りなどを考えておかなければいけません。
7 情報がなくても、弁護士との相談はできる
以上のように、事前に分かっていると、自己破産をすべきか、自己破産をするとしても経費がどれくらいかかるかなど、方針に影響する情報があります。
もっとも、実際にはこのような情報を全て用意して相談にいくのは難しいです。
弁護士としても、実際に法律相談をする中で知りたい情報を聞き取りしていきます。
そのため、情報がなければ相談を始められないわけではないので、まずはどうぞお気軽に弁護士にご相談ください。